#日記

写景(3) 夜の小道

昨日で旧メモ帳や紙片の整理が終わった。ブログ継続日数24日。日々の閲覧数はほぼ1名、ときおり2名のこともあるが、3名になったことはない。いささか、さびしくはあるが、もとより多人数の関心をひくブログではなく、独りよがりの記事内容だとの自覚はある。…

常景(十九) 住宅地域への小道

色褪せた緑の葉叢の中に、落花前の萎えた赤い花弁をいまだしぶとく残した椿や、冬枯れてはいても、すでに芽吹きはじめた桜の樹などが、小道の両脇に立ち並ぶ。その道の中ほどを、一人の女がベージュのジャケットの背中に垂らした後ろ髪に、両手をあてながら…

常景(十八) 十字路の横断歩道

横断歩道の青信号が点滅し始める。黒いダウンジャケットに両手を突っ込んだままの若い男が、小走りに渡って行く。その歩運びに合わせるように、左折の車が減速もせずに、男のニメートルぐらいの背後を駆け抜ける。いま、男児の手を引く若い母親らしきと、中…

常景(十七) マーケットのレジ

中年の男が、レジカウンターの端に買い物籠を置く。精算を済ませた先客の中年の女が、ほとんど籠に満杯の商品(一番上に、肉のスライスのパック、ちらし寿司のパック、バームクーヘンの袋詰め等々)を、両腕に抱えレジ前の窓際の長テーブルに運ぶ。レジ打ち…

常景(十六) 放水路沿いの小道

大池公園そばの四ツ辻からの小道を、三歳くらいの幼女がときおり軽くスキップしたり、小走りしたりしながら歩いてくる。幼女は、ふと立ち止まり、道端にかがみこむと、何か小さな物を指につまみ上げうしろを振りむく。そして、それを目先にかかげて、近づい…

常景(十五) 丁字路交差点

夕刻の丁字路交差点に架かる歩道橋の真ん中あたりに、夫婦らしき老男・老女が手すりに身を寄せ、直進方面を見やっている。ヘッドライトを点灯して通過する車の多くは二人の目下で、向かって右に折れてバスターミナルや商店街のあるほうへと流れて行く。老男…

常景(十四) 裏町通りの曲がり角

裏町のゆるい坂道を、バスや乗用車が間遠に行き交う。坂の下方、脇道への曲がり角を少し入った民家の壁沿いに、飲み物の自動販売機が二台設置されてある。立ち止まった一人の顎マスクの老男がコインを一枚投入し、赤いラベルのボタンを押して、受け口から缶…

常景(十三) マーケット前の出店

マーケットのドア前に、天幕だけの簡易テントが一張り立っている。長テーブルに、一山いくらのざる入りみかん、床に籠入りの白菜、ピーマンなど、農協の農産物が置いてある。五分ほども品定めしていた老婆が、ニンジンを一袋店の手提げ籠に入れ店内へと入っ…

常景(十二) 住宅街おくの裏道

平屋の廃店が一軒、住宅街よりさらに奥まった裏道沿いにぽつんと建っている。正面の黒く苔むした切妻のスレート葺きの屋根の下方に、「COFFEE」と白く太書きの英文字が薄くかすれて残る。かつて喫茶店だった、とわかる名残りはそれぐらいしかない。くすんだ…

常景(十一) 川沿いの田舎道

川堤に沿って両側に竹林と雑木林がずっと連なり続く。川幅は二十メートルくらいで、地肌をむきだしの川底の両端に枯れ草や枯れ薄が密生している。水は晴天の空と雲を映しながら、川底の砂利を浸すぐらいに浅く流れて行く。細い支流との合流箇所に、白鷺が一…

常景(十) マーケット前の広場

昼日中の空は薄灰色の雲に覆われている。広場のベンチで中年の男が新聞を読んでいる。足下の石畳に、天井の網目のフェンスや鉄骨の影が交叉して幾何学模様に淡く落ちている。マーケットの二階出入り口から架設されて伸びる歩行通路を、マスク姿の客が一人、…

常景(九) 川沿いの公園 (盛夏)

川堤に沿って緑樹が低く、高くと連なり続く。カラスが二羽、また三羽、と樹から樹へと飛び移る。園内中央の花壇エリアに、レモンに似た紡錘形の緑の果実をたわわに実らせた二本の木が、離ればなれに植わっている。その一本の木蔭で、白マスクを顎にずらせた…

常景(ハ) 川沿いの公園 (梅雨)

雨上がりの午後の梅雨空は、いまだ全面ほの白い薄雲に覆われている。小止みなく吹くゆるい風に、川沿いの遊歩道の木立の枝葉が揺れる。「持ち帰らずに鑑賞して下さい(世話人一同)」と立札のある花壇に、丈高い茎のひまわりが十本以上も群れて黄色に咲く。…

常景(七) 坂通り

丈高く繁茂する並木を両脇に、ゆるい上り坂道がつづく。その中ほどで白マスクの老男が歩道の縁に立って、通りの反対側の方をしばし仰ぎ見ている。老男の目先の電線に、雀らしき小鳥が一羽だけ止まっている。下から見ると、小鳥のシルエットは街路樹のてっぺ…

常景(六) 通学路

街路樹の葉叢にまぎれた窓明かりが、夜陰の中にポツリポツリと浮かぶ。その住宅街を貫いて、通行車も間遠な一本の舗装された通学路が、まっすぐに本道の方へと伸びている。歩道には、目測で三、四十メートル間隔に、点灯した外灯のポールが立ち並ぶ。ひとり…

常景(五) 公園前のバス停

川沿いの停留所にバスが来て停る。降客のうち、白マスクが四人、黒マスクが一人いる。バスが発車すると、欧米人らしき禿頭の老男と、中年の日本人女性が間断なく会話を交わしながら、急ぎ足で停留所のそばをよぎって行き、バス停背後の川堤への階段の前で立…

常景(四) マーケット前の広場

マーケット向こうのバスターミナルの一角に、バスが一台出待ちしているのが見える。広場の自動販売機の前に、二歳ぐらいの幼児がいる。彼は手を上げて、自分の頭より高い販売機の点滅する下段のボタンを次々と押したり、その下のつり銭口を指でしきりにまさ…

常景(三) コンビニ店内

新規開店したばかりのファミリーマートのレジカウンターの前に、マスクをした中年の男が立つ。おなじくマスク姿の若い女店員が応対する。二人の間には、飛沫感染防止用のビニールの間仕切りが垂れている。男が何か言うと、女店員がタバコの棚に沿ってキョロ…

常景(二) マーケット店内

店内にはざっと四十人ほどの買い物客がいて、全員がマスクをしている。レジを出た客は窓際のカウンターで横一列になって、買い物かごの食品を自分の袋に入れる。老男が、パック弁当を持つ手をふと手を止めて顔を上げる。彼の目前のウインドウには、白いキャ…

常景(一) 住宅地域の商店街

住宅地域の一角に小商いの店が十二、三ほども軒を連ねる。午後六時過ぎ、敷地内をよぎる人影はない。廃店して久しいマーケットの退色した茶色の側壁がくすんで埃っぽい。その壁面上部にあった店名の青い英文字の跡が、夜目には地色にまぎれてごく薄い。明か…