常景(ハ) 川沿いの公園 (梅雨)

 雨上がりの午後の梅雨空は、いまだ全面ほの白い薄雲に覆われている。小止みなく吹くゆるい風に、川沿いの遊歩道の木立の枝葉が揺れる。「持ち帰らずに鑑賞して下さい(世話人一同)」と立札のある花壇に、丈高い茎のひまわりが十本以上も群れて黄色に咲く。今その脇を、若い男女のカップルが足取りも軽く――女はポニーテールに束ねた長目の髪を左右にはね踊らせながら――通り過ぎて行く。散華の後、今はパッと見に葉っぱだけの藤棚の下のベンチに老男が一人いて、木材を模した樹脂製の幅広のテーブルに本を広げて読んでいる。干からびた五つ六つの藤の花片が机上に散り残る。彼の足元にもいく片かが落ちている。それらは、雨に濡れた敷き煉瓦の湿りを吸ってか、いまだ花弁の薄紫の色をかろうじて保っている。

(2020年6月20日