2023-11-12から1日間の記事一覧

常景(九) 川沿いの公園 (盛夏)

川堤に沿って緑樹が低く、高くと連なり続く。カラスが二羽、また三羽、と樹から樹へと飛び移る。園内中央の花壇エリアに、レモンに似た紡錘形の緑の果実をたわわに実らせた二本の木が、離ればなれに植わっている。その一本の木蔭で、白マスクを顎にずらせた…

常景(ハ) 川沿いの公園 (梅雨)

雨上がりの午後の梅雨空は、いまだ全面ほの白い薄雲に覆われている。小止みなく吹くゆるい風に、川沿いの遊歩道の木立の枝葉が揺れる。「持ち帰らずに鑑賞して下さい(世話人一同)」と立札のある花壇に、丈高い茎のひまわりが十本以上も群れて黄色に咲く。…

常景(七) 坂通り

丈高く繁茂する並木を両脇に、ゆるい上り坂道がつづく。その中ほどで白マスクの老男が歩道の縁に立って、通りの反対側の方をしばし仰ぎ見ている。老男の目先の電線に、雀らしき小鳥が一羽だけ止まっている。下から見ると、小鳥のシルエットは街路樹のてっぺ…

常景(六) 通学路

街路樹の葉叢にまぎれた窓明かりが、夜陰の中にポツリポツリと浮かぶ。その住宅街を貫いて、通行車も間遠な一本の舗装された通学路が、まっすぐに本道の方へと伸びている。歩道には、目測で三、四十メートル間隔に、点灯した外灯のポールが立ち並ぶ。ひとり…