覚帖(一六) 住宅地域内の通り道

 日暮れどき、住宅地域内の道を中学生くらいの少年が歩いて行く。そのかたわらを、一人の少女が背後から足早に通り過ぎる。そして少年の七、八メートル前で立ち止まり、振り向いて彼を見る。少女は四、五歳、短パンにtシャツ。肩にかかる髪は黒いが、その顔は欧米人、或いはハーフに見える。少女は身動きもせず少年を見つめる。少女が挨拶のようにコクンと頷くと、少年も同じ仕草を返す。それを合図にして少女が少年のわきを小走りに駆け戻って行く。少年はちょっと振り向きかかるが、そのまま歩き去る。

(2017~19)