覚帖(十五) 団地の駐車場」

 雨上がりの夕刻の空に星がまばらにでている。建ち並ぶ居住棟の外付けの廊下や、非常階段はすでに常夜灯で明るい。出入口の一画の狭い駐車場内に、冬枯れの落葉し切った丈の高い立木が一本ある。その枝に何か白い布のような物が一つ絡まっている。そばの外灯のスポットを浴びるようして、布らしきはそこにある。ゆるい風にも揺るぎもせずに、樹の上部の枝に垂れ下がったままでいる。その直下に赤い灯りをボディに反射させた車が三台駐車している。場外背後に建つ民家の台所らしき窓明かりに、人影が淡く浮かび動くのが、レースのカーテン越しに判別できる。

(2017~19年)