覚帖(十四) 大通りの歩道橋

夕暮れどき、大通りに架かる歩道橋の縁から、若い男がバスターミナルの方を、ちょっと放心した感じに見下ろしている。そこでは赤錆色の場内灯のもと、バスが数台停車して出待ちしている。同じ敷地内の閉店間近のマーケットや、銀行のATMコーナーのウイン…

覚帖(十三) 団地前のバス停

道路沿いの団地の駐車場を囲んで、松の木が十五、六本も植わっている。午後の六時過ぎ、風はなく松の葉叢は微動だにしない。広い石垣の面に松の樹影が色濃く落ちている。芝生の常夜灯や掲示板の明かりが薄闇に浮かぶ。駐車場の背後の居住棟の窓明かりは、ま…

覚帖(十二) 丘道の公園前の駐車場

夕方、坂道の途上にある公園前の駐車場には車も、人影もない。公園はすでに閉門している。駐車場の隅にコカ・コーラと白抜きの英文字で書かれた、赤いボディの自動販売機が一台設置されている。丈高い竹林の葉叢が、風に煽られてこやみなく揺れ、ざわめく。…

覚帖(十一) 脇道のマーケット前

山の端に浮かぶ大きな雲に、落日の残光が朱く照り映えている。肌寒い夕暮れの風が吹く。マーケット前広場の常夜灯はすでに灯っている。ワイドな外ガラスの壁面を透かして、店内を右に左に歩く客たちの様子が見える。駐輪場の脇に植わる樅の木のそばに、若い…

写景(2) 街のオープン・カフェ

覚帖(十) 屋外運動場

川沿いのグラウンドを囲む丈高いフェンス越しに、川向うの丘に建ち並ぶ団地の居住棟が見える。その背後高くの山稜付近の空は、夕暮れて茜色に染まる。川堤の桜並木には、まだ紫紺のサクランボが残る。木の下のサツキは、赤い花が満開。無人の野球グラウンド…

覚帖(九) マーケット前の通り道

小雨がパラついている。空は灰色の雲に覆われているが、明るみ始めてもいる。石畳が雨に濡れている。マーケットエリアには立木が多い。初夏の葉群れの色は濃い緑。店先の長い庇の縁から雨だれがポツリポツリとおちる。銀行のウインドウに、笑み顔した若い女…